Thursday, April 02, 2026

「また今夜も寝てくれなかった」
そう思いながら、自分を責めていませんか。
あなたが責められるべきことは、何一つありません。
ただ、一つだけ知っておいてほしいことがある。
「寝かしつけは技術だ」という思い込みが、あなたを苦しめているかもしれない。
2007年のある日のことです。
ダンス未経験のパパが、社交ダンスのビデオを見ながらなんとなくリズムに乗ってステップしていました。腕の中には、さっきまで泣いていた赤ちゃん。
気づいたら、スヤスヤ眠っていました。
技術ゼロ。知識ゼロ。ただ、リズムに乗って、抱っこしていただけ。
それだけで十分だったのです。
「どうやったの?」という問いから、ベビーダンスの研究が始まりました。
赤ちゃんはお腹の中にいた頃から、ずっとリズムを感じて生きていました。
心拍の音、呼吸の揺れ、歩くたびの動き。
その記憶は、生まれた後も体に刻まれています。
だから一定のリズムで揺れると——安心する。眠れる。
小児科医の監修のもと、この原理をプログラム化したのが「ベビーダンス」です。2007年、神奈川県で世界初の親子ペアダンスが生まれました。
上手に踊らなくていい。特別な才能もいらない。ただ、抱っこして、リズムに乗るだけ。
あなたの抱っこは、もう十分なんです。
技術を磨こうとしなくていいです。完璧な方法を探さなくていいです。
今夜、抱っこしてリズムに乗ってみてください。
それだけで、変わります。
ベビーダンスを通じて、19年間・28万世帯の親子と関わってきた中で、気づいたことがあります。
育休中に赤ちゃんと向き合っている親は、知らないうちに3つの力を鍛えています。
泣き方の違い、表情の微妙な変化、眠気のサイン。言葉を持たない赤ちゃんから情報を読み取るために、親は無意識に観察精度を高めています。
赤ちゃんの状態は予測不能です。計画通りにいかない中で、今この瞬間に最善の判断をする。その繰り返しが、柔軟な対応力を育てます。
「なぜ今泣いているのか」「何をすれば落ち着くのか」を自分の中で整理し、パートナーや保育士に伝える。この言語化の訓練が、思考の整理力につながります。
観察力、即応力、言語化力。
これは偶然にも、職場で最も必要とされるリーダーの能力と同じです。
育休は「仕事から離れている時間」ではありません。
別の形で、人としての能力を再構築している時間です。
赤ちゃんとリズムを合わせながら、親自身も変わっていく。ベビーダンスが大切にしているのは、その「ともに育つ」という時間です。
山本 由美子
一般社団法人日本ベビーダンス協会 代表理事 / アイビー株式会社 代表取締役

ベビーダンス考案者
一般社団法人日本ベビーダンス協会 代表理事。ユネスコ国際ダンス会議(CID)公認・小児科医監修のベビーダンスを考案。著書『ママと赤ちゃんの心と体に効くベビーダンス』(PHP研究所)。全国でベビーダンスを届け続けている。
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