Friday, June 26, 2026

ハグの文化って、知っていますか?
「子どもを早く寝かせて、自分の時間を作ろう」——そういう投稿、SNSでよく見かけますよね。できるだけ子どもに触れる時間を減らして、一人で寝られるように育てていく。子育て中のパパママが、必死に自分の時間を確保しようとしているのはわかります。それって、すごく自然なことだと思うんです。
でも、お手本にしているのが欧米式の寝かしつけだとしたら、ちょっと待ってほしいんです。
欧米では、時間になったら子どもをベッドに寝かせてドアを閉める。泣いても叫んでも親は見に行かない。子どもはそれを学んで、やがて一人で眠れるようになる。日本式の感覚からすると少し寂しい気もしますが、彼らにとってはごく合理的なやり方です。文化としてそこに根付いているのも、ちゃんと理由があります。
でも——その文化には、ハグがあるんです。
見知らぬ人ともさらっとハグをする。大人になっても親とハグをする。そういう日常的な「触れ合い」があるから、成り立っている子育てなんじゃないかなって、私は思っています。
それを表面だけ日本に持ってきたとき、私たち日本人はどこでハグをするんでしょう?男女の意味ではなく、人として誰かに抱きしめてもらう体験。いつ、どこでできるんでしょうか。
あなたが子育てで学んできたこと、今、SNSに書き換えられていませんか?
私は社交ダンサーです。高校2年生のときからずっと踊ってきました。
社交ダンスって、初めて会った人とすぐに体を寄せ合って踊るんです。ダンサーの中ではそれをハグとは呼ばないけれど、一般的に見れば完全にハグの距離です。膝から上、みぞおちのあたりまでをぴったり合わせて。片手は相手に添えて、男性なら女性の背中をホールドし、女性はその腕に包まれるようにして踊ります。
そこに恋愛感情はなくて、ただ体を通して相手の意図を感じ取る。次に何をしたいのか、どこへ行きたいのかを、皮膚で読み取る。そういう感覚なんです。
私は幸運なことに、高校生のころからそういう欧米の身体文化を学んできました。でも赤ちゃんのころにたっぷり抱っこされた経験もなく、ハグも知らずに育った人が、これからどんどんグローバルになっていく社会の中で、どうやって国籍の違う人と心でつながっていくんだろう——そう思うと、正直、不安になります。
ベビーダンスに来てくださる親御さんは、保育士さんや教員の方など、子育てを学問として学んできた方が多いです。そういう方は、「なぜ抱っこが大切なのか」を知っていることが多い。でも科学的な背景を知らないまま今の苦しさだけを解消しようとすると、「抱っこしないで寝かしつける」という選択肢を、つい取り入れてしまうことがあります。
SNSでは「子どもが一人で寝られるって素晴らしい!」「親の時間を持つことがどれだけ大切か」という発信がたくさんあります。今がつらいときに、それを見ると飛びつきたくなりますよね。気持ちはすごくわかります。
でも、子どもが思春期を迎えるころ、ハグが自立を促してくれることがあります。
ベビーダンスで育てたうちの娘は、もう18歳で一人暮らしを始めました。経済的な自立はこれからだけど、精神的な自立はとても早かったと感じています。大きなイヤイヤ期もなく、激しい反抗期もなく。「親に反抗する理由が見つからない」という感じでしょうか。子どもが体で求めてきたことに応えてきた積み重ねが、今の彼女の安定につながっているんだと思っています。
一方で、「抱っこを控えた子育て」で育った子どもが長期的にどうなるのか、私の周りには事例がないのでわかりません。ただ、多くの研究者が言っていることがあります。笑顔と言葉の質、親子のやりとりの豊かさが、子どもの育ちにとってとても大切だと。
親が笑顔になれて、子どもにたくさん声をかけてあげられる——それができているなら、どんな形の子育てでもいいと私は思っています。
でも親が笑顔になれなくて、子どもに声をかける余裕もなくなってしまう——それは子どもにとっての損失です。
子どもが「抱っこして」と求めたときに応えてあげて、肌を触れ合わせながら楽しく過ごす。そのくり返しが、親が自然と笑顔になれて、子どもへの声かけが増えていくきっかけになると、私は信じています。
抱っこをしなくても親が笑顔でいられるなら、それはそれでいい。でも親が自分中心の生き方を優先すると、どうしても子どもは後回しになりやすい。そのことは、頭の片隅に置いておいてほしいんです。
私自身、子育て中はベビーダンスに夢中で、娘の求めに100%応えられたわけじゃありません。でも「あれだけ抱っこしてあげた」という実感が、今も私の親としての自信を支えています。娘も「ママはいつでも抱っこしてくれた」という安心感を今も持っていると感じています。
子育ては、親のそれまでの生き方がにじみ出るものだと思います。何を大切にしてきたか、どう人と関わってきたか——それが子どもへの関わり方に自然と現れる。でも、今から変えることも、十分できます。
ベビーダンスは、抱っこしながらリズムに乗って踊るメソッドです。19年間、親と赤ちゃんの間に自然な双方向のやりとりが生まれる時間と空間を作ってきました。肌の触れ合いとリズムを通じて、親が笑顔になれて、子どもにたくさん声をかけてあげられる——そんなきっかけを一緒に作りたいと思っています。
「ベビーダンスに出会って、娘との距離がぐっと近くなりました。抱っこしながらリズムに乗ると、自然に声が出て、笑顔も出て。」
——参加者の声より
ベビーダンスという選択肢もあること、知ってもらえたら嬉しいです。
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山本由美子
日本ベビーダンス協会 代表・ベビーダンス考案者

ベビーダンス考案者
一般社団法人日本ベビーダンス協会 代表理事。ユネスコ国際ダンス会議(CID)公認・小児科医監修のベビーダンスを考案。著書『ママと赤ちゃんの心と体に効くベビーダンス』(PHP研究所)。全国でベビーダンスを届け続けている。
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