Tuesday, February 03, 2026

墨田区のすみだ共生社会推進センター。
窓から差し込む光が、円になって座る十数人のパパたちと赤ちゃんを照らしている。墨田区主催のパパスクール。毎年パパたちは入れ替わるけれど、最初の「初めまして」の時間はいつも同じだ。少し緊張した面持ちのパパたちが、赤ちゃんを連れてやってくる。赤ちゃんたちも、パパの膝の上でじっと不思議そうにこちらを見つめている。
「どんな子に育ってほしいですか?」アイスブレイクにパパたちに聞いてみた。
一人のパパが、少し照れたように口を開いた。「健康で、優しい子になってくれたら、それで」
パパたちが、深く、何度も頷く。「そうですね」「本当に」
「夜泣きをしないでほしい」とか「立派な人になってほしい」なんて声は、どこからも聞こえてこない。
パパたちの大きな手が、赤ちゃんの手をそっと包み、身体を撫でて歌いながら手遊びを始める。ストレッチで身体を伸ばすパパの表情は、どこか誇らしげで、柔らかい。
私はスマホを操作して、Bluetoothで繋いだ集会場のスピーカーに楽曲データを送る。サンバのリズムが、静かな部屋に響き渡る。
パパたちが一斉に立ち上がる。膝を深く曲げ、リズムに合わせて弾むようにステップを踏み出した。抱っこ紐の中で眠る赤ちゃんの頭を、パパの大きな手のひらがそっと覆う。揺れに合わせて、パパの体温が赤ちゃんの背中に伝わっていく。
ベビーダンスのステップを繰り返す。パパたちの額に、じんわりと汗が浮かぶ。自分の呼吸を整え、腕の中にある数キロの重みを一歩一歩にのせて、ただ淡々と足を運ぶ。
誰に教わったわけでもない、その慈しむような手つき。鏡に映る自分たちの姿を見つめるパパたちの目は、もう外側に答えを探してはいない。ただいま、ここに生きている自分の体温と、腕の中の命の鼓動を確かめている。
わが子に願ったその言葉は、かつて自分が誰かから贈られたギフトそのものなのかもしれません。
山本 由美子
一般社団法人日本ベビーダンス協会 代表理事
アイビー株式会社 代表取締役

ベビーダンス考案者
一般社団法人日本ベビーダンス協会 代表理事。
ユネスコ国際ダンス会議(CID)公認・小児科医監修のベビーダンスを考案。著書『ママと赤ちゃんの心と体に効くベビーダンス』(PHP研究所)。全国でベビーダンスを届け続けている。

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